カーズ

レーシングタイヤを履いて、結構優秀なエンジン積んでるのに、
なんでこんなにゆっくり走らないといけないんだ。


たまにサーキットに出ると、走ってる走ってる。レーシングカーが。
知的で高尚な会話の渦の中が非常に心地よい。
アイツは海外遠征に行ってるとか。こんど日本代表に選ばれたとか。
目が輝いていて上向きで眩しい。ヒリヒリするけど、いい。
出自はここだったはずなんだ。明日の日本を動かす力。


・・・


他方、ボロボロなレーシングタイヤを履いて乗り込んだら、そこはダートレース。


車輪のでかいオフロードタイヤを履いた、車がゴロゴロ。
なんという場所に入り込んでしまったんだ、と少し戸惑うも、
そのオフロード仕様の奴らのドリフトを見よう見まねで真似てみる。


(・・・案外イケるじゃないか。)


最初は場違いな車体を馬鹿にされたけれど、回転の速さは負けない。
アンタもなかなか味があるじゃないかと、認めてもらったりして。

もともと、日本一のスピードを目指すような生粋のレーシングカーじゃなかったわけで、
少しずつ、ハイブリットな感じでオフロードにも慣れてくる。

こっちはこっちで心地よい。
何より、気をはっていなくていよい。いい意味で雑でオフロード。でも笑顔があって。
とんでもない発想力に時に嫉妬したりもして。明日の日本を豊かにする力。


オフロードレースのなかでも、またその先端のところ。
これまた奇想天外なハイコンテクストな会話の渦の中で、
我を忘れて馬鹿笑いしちゃうような感覚がたまらない。


っていうか、なんで俺らコレ乗ってんの?一度降りてみようか?
なんつって、世界や設定を根底から覆してみたり。
無鉄砲に飛び出しちゃったりして。

我を忘れて、泥だらけになりながら、夢中で。
なんか、生きてるぞ、っていう感じ。有り体に言えば、青春、のようなもの。


・・・


市中の人になる、市中で生きるっていうのは、
そういうところとはまた少し無縁のところで生きるということ。

20キロで路地を走るような。
もみじマークの車に合わせて、慎重に低速で走るような。

こころのレーシングタイヤもオフロードレースの体験も、それはそれ。
排気ガスをなるべく出さないように、エコ運転。



・・・でも、たまに少し物足りなくなって、
泥だらけの山道や、つるつるのサーキットが恋しくなる。

そんな感じ。