読書感想文。

 
きことわ、読了。

夢の話。女の子の話。生と死の話。ノスタルジー。記憶。歴史。世界。

このモヤモヤした感覚、これが文学なんだ、とかいわれればそうなのかもしれないけれど、

これがどうにも、気持ちいいときと、そうでないときとあるから、
だから、あぁ、私はあんまり小説を読んでこなかったのかもしれない。とも思う。


モヤーっとした雰囲気を「分かった気になる」のは簡単だけど、何かそれもそれで違う。
一つ一つのレトリックの秀逸さにクローズアップして、これはすぐれた作品だ、とかいうのも、何か違う。

淡々としてる物語にさえ、強引に評価軸を立てて、それをもとに、善し悪し、って言うのも、あんまりすきじゃない。

腑に落ちない。



自慢じゃないけど、子供のころから「こくご」は得意だった。

かつて、学習塾や入学試験で受けた現代文のテストの成績はすこぶるよかったけど、
説明文や論説文では間違えないのに、なぜか、小説を題材に設問が作られていると、
よく、間違えていた。


悔しかった。。


そんなことをふと思い出す。


90分や120分のテストで、一つも題材に小説が出てこない試験も多かったので、
テストが始まって、設問を最後までばーっとみて、小説が入ってると、


「あぁ、嫌だな」


と思ったのをすごく覚えている。

できることなら、入学試験のテストには小説が出ませんように、、、って。



その時に、子供ながらに感じていた疑問、、、


「小説で描かれている心情や作者の意図に、マルバツで判断できる正解などあるの?」ということ。



深読みすればするほど、テストでは間違いに近付いていく。
だから、何となく、テストのときに意識していたことといえば、


「深読みしない」ということ。


「この問題を、小学校6年生が、中学3年生が、目にしたとして、素直に素直に受け取って、答えとして
導かれる、一番妥当性の高い選択肢を選ぶ」ということ。


周りも何となくそうだったと思う。


よく、テストの鉄則として、「問題を作成している人間の意図を意識しなさい」と言われることがある。
それは、そのとおりだと思う。自分の独自の解釈や感性は、テストでは全く必要ないからだ。


そして、意識的にその取捨選択を行わないと、物語への「主観的解釈」が邪魔をする。


一方、論説文や説明文ははっきりと文章に「ロジック」があるので、
小説に抱くような、独自の解釈や、主観は生まれる余地がないので、楽だった。


その選択肢が「正解だ」という、客観的論拠がある。


論説文を題材にした問題で答え合わせして、間違っていたとしても、なぜ間違ったのかは、すぐにわかった。
そして、納得がいった。


が、小説を題材にした設問の「正解」には、納得がいかないことも多かった。
納得できずに、先生に「なぜ、こちらの選択肢は間違っていると言いきれるのか」を、
聞きに行ったこともあった。


深読みすればするほど、

「いや、でもこれはこの表現の逆のことを実は伝えたいんじゃないか」とか、

「正解は2番っぽいけど、こんな単純な読み方をして、何が面白いのか」とか、

「この情景描写はあたかもポジティブな心情の表れとして描いているようで、
実はネガティブさを隠すためのものじゃないか」とか、なんとか。。


結局、フィクションの楽しみ方って、
多面性を持った表現部分をどう解釈するか、みたいなところに面白さがって、


マルバツの世界では、おそらくこういう楽しみ方は枷になるのだろう、ということも、
幼いながらに重々理解していながら、


それでも悔しさが残った。。。


そんな子供のころの体験が、私を小説から遠ざけていたのではないか、と、今になって思う。






設問4
この「きことわ」に対する感想として、もっとも正しいと思うものにマルをつけなさい。


1.生と死、夢と現実、すべては、地球の長い長い歴史に渦の中にあり、
一つ一つは曖昧模糊として、不安定で、絡みあっているということを伝えたいんだなぁ。


2.貴子と永遠子の二人のノスタルジーを、逗子や葉山の風景とともに、爽やかに描き出していて、
心地よい読後感があるなぁ。


3.時折現れる、黒い闇。貴子の出生について。これが夢なのか現実なのか。
そこが最後まで曖昧なまま分からないところに、不安定さを感じ、そこへの消化不良感からか、
この主人公二人に、文字通りの「幸せ」の時間が流れている気がしないなぁ。


4.淡々とした中にも、ときおり、焦燥感にかられて、どんどん先が読みたくなる部分もあるんだけど、
意図的に出てくる「ひらがな」の多様にもなじめないし、賢そうな難しい漢字もたくさん出てくるし、
伏線っぽいものはいくつかあるけど、回収しきらないし、なんだか、手放しで「面白い」と言えない感じだなぁ。


感想って、すごく難しい。

なぜなら、これは私の苦手な「小説」だから。